
「療法食」と「総合栄養食」の決定的な違いとは?
2025年11月18日
📑目次
愛猫が動物病院で特定の病気(腎臓病、尿路結石、アレルギーなど)と診断された時、獣医師から「療法食(りょうほうしょく)」に切り替えるよう指示されることがあります。
「療法食って、普通のフードと何が違うの?」 「病気が治ったら、やめてもいいの?」 「健康なうちから予防のために与えてもいい?」
療法食は、その名の通り「食事療法」のための特別なご飯であり、飼い主の自己判断で「なんとなく」与えることは、時に愛猫の健康を深刻に害する危険性があります。
この記事では、「療法食」と「総合栄養食」の決定的な違いと、その正しい使い方について解説します。
■ 1. 「総合栄養食」と「療法食」の目的の違い
まず、目的が全く異なります。
- 総合栄養食(いつものご飯):
- 目的: 「健康な猫」が、毎日食べ続けることで健康を「維持」するためのフード。
- 栄養: AAFCOなどの基準に基づき、猫に必要な栄養素がバランス良くすべて含まれています。
- 療法食(特別なご飯):
- 目的: 「特定の病気の猫」が、その病気を「管理・サポート」するために食べるフード。
- 栄養: あえて**栄養バランスを極端に調整(制限・増強)**してあります。
例えるなら、「総合栄養食」は私たちの「毎日の健康的な和定食」であり、「療法食」は医師から処方される「薬」や「特別な病院食」に近いものです。
■ 2. なぜ「療法食」は病気に対応できるのか?
療法食は、特定の病気に対し、科学的根拠に基づいて栄養素を調整しています。
- 例1:腎臓病サポートの療法食 (記事11参照) 腎臓への負担を減らすため、「リン」と「タンパク質」を健康な猫の基準より大幅に低く制限しています。
- 例2:尿路結石(ストルバイト)の療法食 (記事8参照) 結石の材料となる「マグネシウム」や「リン」を制限し、さらに尿のpHを「酸性」に傾けるよう設計されています。(石を溶かす、または作らせないため)
- 例3:食物アレルギーの療法食 (記事7参照) アレルゲンにならないよう、タンパク質を「加水分解」という技術で分子レベルまで細かく分解してあります。
■ 3. なぜ「自己判断」での使用が危険なのか?
ここが最も重要です。「特定の病気」のために極端に調整されているため、健康な猫や、別の病気の猫が食べると、深刻な健康被害を引き起こします。
- 危険な例①: 健康なシニア猫が「予防のため」に腎臓病用の療法食(低タンパク)を食べ続ける。 → 筋肉を維持するためのタンパク質が不足し、深刻な栄養失調や免疫力の低下を招きます。
- 危険な例②: 健康な猫が「結石予防のため」にストルバイト用の療法食(尿を酸性化)を食べ続ける。 → 尿が酸性に傾きすぎ、逆の「シュウ酸カルシウム結石」という別の種類の石ができるリスクを高めます。
- 危険な例③: 成長期の子猫が、成猫用の療法食を盗み食いする。 → 成長に必要な高タンパク・高カロリー・ミネラルが全く足りず、発育不全になります。
療法食は、必ず「獣医師の診断と指示」に基づいて与えなければならないのです。
■ 療法食選びで「データベース」を使う意味は?
「獣医師の指示が絶対なら、データベースで比較する意味はないのでは?」 そう思われるかもしれません。
しかし、例えば「腎臓サポート」の療法食一つとっても、メーカー(ロイヤルカナン、ヒルズ、ドクターズケアなど)によって、使用する原材料や、「食いつき(嗜好性)」は全く異なります。
- 「病院でAを勧められたけど、アレルギー源の〇〇が入っている…」
- 「Aを全く食べてくれないから、同じ効果で別のメーカーのBを試したい」
- 「BはAと比べて、タンパク質やリンの値がどう違うのか知りたい」
このような時、飼い主さまが「獣医師の指示の範囲内で、最適な選択をする」ために、当サイトのデータベースは強力なツールとなります。
■ 結論:「療法食」は薬。予防は「総合栄養食」の質で決まる。
療法食は、病気を治す魔法のご飯ではなく、病気と付き合っていくための「処方食」です。獣医師の診断なしに与えるのは絶対にやめてください。
そして、愛猫を療法食のお世話にさせないため、つまり「健康な状態を一日でも長く維持する」ために私たちができること。 それが、健康なうちから「リン」の値が低めなフードを選ぶ(記事11)など、データに基づいた「高品質な総合栄養食」を選ぶことです。
病気になってから慌てるのではなく、病気になる前の「今」のフード選びこそが、愛猫の未来を決めています。
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